ずっと人のためだけに生きてきたような人だったから、
趣味らしい趣味ってもってなくて。
楽しみって言ったら相撲と野球観戦。
ジャイアンツが大好きで、放送される試合は全部見てた。
私が小さい頃は、試合終了まで放送されるってことは少なかったから、
テレビの放送が終わったらラジオにかじりついて結果を聞いてたっけ。
勝てば上機嫌だったけど、負けが込んでくると
『この監督やけん勝てんとたい、選手の起用が間違っとる』
なんて悪態ついてた。
それが嫌で、自分の部屋に引っ込んだことも度々あった。
今思えば、家の中での楽しみはそれだったんだから、
思いのまま見せてればよかったのかなぁって。
姪っ子が帰ってきてからはもうメロメロで。
『ふぅちゃんふぅちゃん、ほんにあんたはかわいかなぁ』
って、目じりが下がりっぱなしだった。
甥っ子が生まれたころにはもう、体力的に落ちてたから抱っこできなかったけど。
それでも嬉しそうだった。
だからこそ。
私が部屋に行ったとき、異常にもっと早く気付けてたら。
冷静に観察して、もっと早く救急車を呼んでいたら。
じいちゃんは助かったのかもしれない。
そう、ずっと考えてる、後悔してる。
何より。
じいちゃんに花嫁姿を見せてあげられなかった。
私には何も言わなかったけど、知り合いなんかには
『早く花嫁姿が見たい』
と言っていたらしいこと、今日聞いた。
すごくすごく心残りで、仕方ない。
もっともっと、優しくしてたら。
もっともっと、たくさん会話をしていたら。
もっともっと、労わっていたら。
後悔してもしきれないくらいの後悔。
お別れの日、本当に多くの人が参列してくれた。
それはホントに嬉しかった。
じいちゃんがやってきたことって、間違いじゃなかったんだなぁって。
温厚で人の嫌がることは絶対しない。
自分の信念は、例えものすごくお世話になった人から頼まれても曲げない。
まぁ・・・そこはちょっと”もっこす気質”だったけど、
それだからこそすごく周りに信頼されている人だった。
私、思ってた以上にじいちゃんのこと誇りに思ってたんだなぁ。
じいちゃん、86年間本当にお疲れ様でした。
優しくないし可愛げもなかった孫だったけど、
たくさんたくさんかわいがってくれてありがとう。
これからはゆっくり、自分のためだけに時間を使ってください。
本当に本当にありがとう。
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